<ネタバレ>冒頭、死体であるはずの子供が動いてるのがまるわかりなので嫌な .. >(続きを読む)
<ネタバレ>冒頭、死体であるはずの子供が動いてるのがまるわかりなので嫌な予感はしたのですが……。
DVDの解説に「汝の敵を愛せよ、というキリスト教的主題を愛憎と共に描き出した名編」とありましたが、全く描き出してない駄作でした。「娘を殺した犯人の赤子を引き取る」という異常な設定は心引かれた。夫は、妻が浮気相手と密会していことが娘の死の遠因と考えており、犯人の赤子と知らせずに育てさせることが妻への冷たい復讐となる。尋常ではないが、納得できる設定だ。妻や赤子(娘)が真相を知った時にどう絶望し、どう立ち直るか、夫の心はどう変化するか、それがキリスト教の原罪意識、ゆるしとどう結びつくか、それらが主題となる。しかし結果として赤子は犯人の子供ではないことが判明するという肩透かし。これは逃げでしょう。妻が真相を知ったときの苦悩は描かれているものの、娘へのいじめや夫への復讐心はあっさりで、葛藤不足。娘はあんなに天然で快活だったのに、真相を知らされると罪意識により即自殺するという安直さ。かつて「自分がかけがえのない存在と気づいていたら自殺はしなかったのに」と語っていたのに。殺人者の子供は何故自殺しなければならないのか、十歳の子供でもわかるように説明せよ。それがあなたの道義なのか。この娘役の女優には花がなく、演技力不如意で、この役に合っていない。善を具現したかのように誰にでも愛される存在でなければならないのに。鬼母の方が遥かに美しいのはだめでしょう。兄は歯が浮くような科白ばかりでうんざりさせられる。翻って夫役の人の演技力は優れており、科白を云わなくても、その懊悩ぶりは伝わってきた。結局、逃げにばかり走っている印象がある。主題からして魂の浄化や救済が示されるべきであり、「殺人者の子供ではなかったのでよかった」というのは逃避に過ぎない。そこからは人間性の向上や成長が窺えない。人生と真剣に向き合う姿があってこそ感動は生まれる。