<ネタバレ>両親を亡くして戦争孤児となった幼女が拾われた家の少年と動物の .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ>両親を亡くして戦争孤児となった幼女が拾われた家の少年と動物の墓を作る物語。1940年6月、パリ陥落時の南仏の田舎の農家はこんなにも暢気だったのかと驚く。戦争などどこ吹く風だ。その暮しの貧しさにも驚く。服も食事も粗末で、家の中を蝿と蛾が飛び回る。都会っ子の少女との格差が大きい。この格差と貧困が戦争の遠因となっている。暢気そうに見えるが、戦争の影は確実に忍び寄ってくる。長男は馬に蹴られて亡くなるが、その馬は疎開途中のはぐれ馬だった。間接的に戦争の犠牲者だ。隣家には逃亡兵が帰還する。両家は昔からいがみあい、憎しみ合っている。隣人同士でも仲良くできない愚かさは、戦争する人間の縮図といえる。農家の長女と帰還兵は愛し合っているが、家の事情で結婚できないという悲劇がある。戦争孤児となった幼女が川に捨てられた犬の亡骸を追って迷子になり、この家の少年と出会い、共に暮らすようになる。幼女は犬の穴を掘るが、死や埋葬や神の概念は知らない。少年は十字架を立てて犬の墓を作ってやるが、幼女が「一人ぼっちゃじゃかわいそう」というので友達の墓を作ることにした。これが過激化し、教会や墓の十字架を盗む事件に進展していく。子供達の十字架窃盗が原因で、両家の関係は悪化するが、主人同士が墓穴に落ちても喧嘩を止めないのは、人類の愚かさの象徴だ。そうしている間にも戦争で大量の墓が必要になっているという皮肉がある。少年は盗みがばれて折檻を受けても墓の場所は言わない。が、幼女が警察に連れて行かれそうになると、幼女を家に置くことを条件に教えるが、父親は幼女を警察に渡してしまう。自暴自棄になった少年は十字架を川に投げ捨てて鬱憤を晴らす。駅に連れてこられて一人ぼっちになった幼女は、たまらなくなって雑踏の中を少年を探しに駈けだし、ママの名を呼ぶ。幼いながらも死と離別についての概念を悟ったのだ。知らなくてもよい歳なのに強制的に大人にされていく。「禁じられた遊び」の墓は、子供達の魂の墓だ。楽しい筈の子供時代を戦争によって奪われたのだ。親という後ろ盾を失くした子供達の運命は過酷だ。ましてや戦争中だ。雑踏に消える幼女の姿は彼女の将来を暗示する。戦争の犠牲は最も弱い人間に重くのしかかる。禁じられるべきは「遊び」ではなく「戦争」なのだ。哀しくも美しいギターは、虐殺された子供達の魂を鎮めるかのように響き渡る。愚かな戦争を繰り返す人類に憐みを![良:1票]