<ネタバレ>キャメロン監督は前作「タイタニック」のあと、ドラマ「ダークエ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>キャメロン監督は前作「タイタニック」のあと、ドラマ「ダークエンジェル」を製作して一線を退き、3D技術の開発に意欲を燃やした。苦節10年で技術が完成、ようやく製作された本映画。予告ではダメ映画の予感がしたが、実際観てみると驚嘆するほどの出来栄えに溜飲が下がる思いがした。脱帽である。娯楽性と芸術性、人間ドラマが融合した完璧に近い脚本に拍手。バランスの取り具合が絶妙なのだ。ハリウッド娯楽SF作品によくあるジョークやおしゃらけなど微塵もない真摯な作品で、どちらが善悪ともいいがたく、自然と共生するとはどういうことかを深く考えさせる哲学的な要素が作品に深みを加えている。脊髄損傷で歩行できない主人公が、アバタープログラムにより、自由に動けるようになり、新し人生に踏み込むという設定がよい。それだけでカタルシスを得られるのだ。トルークマクト(大龍)や父から貰う弓矢などの伏線もうまい。そしてキャメロン監督が得意な、しつこいほど続く戦闘シーンも健在で嬉しくなる。これが成功の第一の要因。次は美術。異星の多種多様な生物群、自然景観が美しい。どれも独創性が高く、大変洗練されている。龍に乗った飛翔シーンだけも一大スペクタクルである。これを見るだけでも価値があろうというもの。そして3D技術の見事さ。映画史上に残る金字塔を打ち立てたと思う。3D元年と言われるが、これを超える作品がいつ出てくるのやら。2Dを含めても、何年も待たされそうだ。■不満もある。「もののけ姫」「ナウシカ」「ダンスウィズウルブス」のいいとこどりのように見える。大佐やおばか上司など悪者キャラが典型的すぎる。もっと人間味を出せばずっと良くなった。彼らの言い分に斟酌すべき要素を持たせ、時に良心の呵責を起こさせるなど人間臭さを出すべきだったろう。これでは「もののけ姫」「ナウシカ」の表面しかなぞっていないと言われても仕方がない。力と力の戦いになりすぎているのは残念。自然と人間との戦いという要素がもっとあれば、壮大な抒情詩になっただろう。樹同士のネットワークや女博士が死んでエイワと一緒になったなどの伏線は張られていたのだから。動物たちが援軍に来るだけでは物足らない。最後は大団円というわけではなく、あれではまた地球から攻めてくるなと不安が残る。続編への伏線なのだろうか。■文句なしの10点。この映画を映画館で見たことを誇りに思います。