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<ネタバレ>想像するにミュージカルの既成概念を打ち破った作品ではないだろうか。それまでのミュージカルといえば、お気軽に楽しく歌って踊って、ハッピーエンドの愛と夢と希望の物語で、シリアスなものは少なく、童話や空想物語に近いものだった。本作品は全編に溢れる若さと躍動感が特徴で、斬新な俯瞰カットやクローズアップや多カット編集により、汗の匂いが嗅げるほど役者に肉薄している。そして暴力抗争の末、少年ギャングの三人が亡くなるという悲劇。シリアス、暴力、ギャング、バッド・エンド、悲劇、これらはミュージカルにふさわしくない題材だ。「フレンチ・コネクション」「LAコンフィデンシャル」「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」等のミュージカルは想像しにくい。素材と形式が合わないからだ。一方で「アウトサイダー」「理由なき反抗」等はミュージカルにしてもおかしくない。理由は登場人物が未成年だから。未成年者はその存在自体があやふやでどこか危なげ、童話や空想物語の人物めいた所がある。青春物語にすれば例え暴力や悲劇を扱ってもミュージカルになる。それの嚆矢が本作品だろう。スタジオを出て町に飛び出したのも特筆すべきこと。しいて命名すればストリート・ミュージカルの誕生。埃にまみれた昼の街の薄汚なさと混雑ぶり、露に濡れた夜の街の不気味な暗闇、それらの中に入り込むことにより、真実味が増し、演技と悲劇に重みが出た。もう一つ言えば芸術性だろう。綻びひとつ見えない完璧なシンクロ・ダンス、オーケストレーションの凝った編曲と演奏力の高さ、楽曲の素晴らしさは云うまでもない。シリアス加減のバランスも抜群で、例えば刑事やキャンディ屋のじいさんが「けんかはやめて~」と歌い出していたら台無しになっていただろう。昔のミュージカルでファッションも題材も古めかしいのに、どこか斬新さを感じさせるのはこれらの為だろう。物語は民族差別、恵まれない環境、若さの暴発、敵味方に別れた恋人、憎悪の連鎖、復讐殺人と盛りだくさん。あんな小さなナイフじゃ死なない、何故救急車を呼ばないのか、死体の処理や葬式はどうした、兄を殺した相手とその日に寝るのか、遅れると何故待ち合わせ場所に電話をかけないのか等、ツッコミどころはある。喧嘩に明け暮れるギャング団はアホだが、主人公二人は違うので感情移入できる。その設定の上手さ。上階の窓から投げつけたられた瓶は世間の冷淡視の象徴だ。[良:1票]