<ネタバレ>古い映画だが堪能できた。サスペンスとユーモアのほどよく融合し .. >(続きを読む)
<ネタバレ>古い映画だが堪能できた。サスペンスとユーモアのほどよく融合した娯楽作品だ。機知に富んだ脚本の勝利だろう。
人物がきちんと描き分けられ、一見群像劇のようだが、主人公は間違いなくセフトンだ。
彼は軍人としてはぱっとしないが、世故にたけた人間で、如才なくその才を発揮し、それなりに捕虜収容所生活を楽しんでいる。
そこへかつての士官学校の仲間ダンパー中尉が入棟してくる。
彼はセフトンとは対照的な人物。お金持ちで、軍人として出世し、英雄扱いされる。貧乏で出世の叶わなかったセフトンは当初反発するが、紆余曲折を経て、最後にはセフトンが命がけでダンパーを脱出させるという憎い筋立て。美しい友情物語に変貌する。
最も感心したのは二つのサスペンスを用意していること。最初は、誰がスパイか、どうやってナチスと連絡を取り合っているかというサスペンス。それが判明すると、次はそのスパイをどう糾弾、処理するかというサスペンス。悟られれば逃げられるし、殺せば、こちらも殺されるという難題。それを上手に解決したのが最後の脱出劇。それも二段構えの豪華さ。最初は、煙幕を張って、その騒動に乗じてダンパーを奪取し、絶妙の場所に匿う。煙幕の材料となるピンポン玉の伏線もきちんと張ってある。そして、スパイを囮に利用しての脱柵作戦。実にあざやかだ。
気になったところもある。第一に、ユーモア過多であること。内容的から判断して、シリアス路線で行くべきなのに、途中で完全なコメディ路線に脱線してしまっているところがある。全員でヒトラーの真似をしたり、ピンナップガールを想像して踊るところなどはカットしてもよい。ナチス高官がマヌケ過ぎるのも気になる。敵側をぬるくする必要はない。厳格一点張りでも成立する物語だ。次に気になったのは、冒頭の脱出時、セフロンはどうして脱出が失敗すると思ったのかということ。その伏線がない。そもそも仲間が命がけで脱出を図るのに、それを賭けの対象にするのかという疑問もある。文化の違いを感じる。それにしてもナチスは捕虜にたばこを奮発しすぎでは?