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<ネタバレ>後世に多大なる影響を与えた…、かもしれない知られざる映画。棺から夜の帝王が出現、「これから話す物語は、気を失うほどに恐ろしい」と宣告する。目が泳ぐのは、視聴者の不安をあおる繊細な演出だ。小説家と恋人が車で墓場に向かう場面で、昼と夜が交錯する。これはジャンプカットで、既に二人が通常の時間とは違う魔の領域に入り込んでいることを暗示する。夜の帝王は、闇の女王に命じ、死霊に舞踏を披露させる。炎に飛び込んで死んだ女、蛇を愛し火山で死んだ女、初夜で夫を殺した女、羽根飾りのために命を捧げた女など、皆罪を犯して昇天できない死霊だ。黄金に焦がれる女が黄金にされるのは、ウルトラQのカネゴンのひらめきとなった。猫女は、紛れもなく音楽劇「キャッツ」の原型。鞭打つ男は、インディージョーンズ。狼男と木乃伊男のコンビは、スターウォーズのR2-D2とC-3POのモデルで、狼男はチューバッカーでもある。捕まった女はレイラ姫。ゾンビ女は、ナイト・オブ・ザ・リビング・デッドの先駆であり、その踊りは、マイケル・ジャクソンのスリラーに結実し、ムーン・ウォークの萌芽も見える。蛇女は、ジャッキー・チェンのスネーク・モンキー。羽根女は、天使とデート。夫殺しの花嫁は、ティム・バートンのコープス・ブライドの濫觴で、「気を失うほど」影響力は大きい。小説家と恋人が捕縛されて踊りを見せられるのは、視聴者と同じ目線に立たせて、共感を得やすくする演出だ。死霊が胸をはだけて踊るのは、夜の帝王の気を引いて時間稼ぎをし、朝日を浴びさせて亡ぼそうという意図がある。闇の女王もこれに同調し、一見無駄な踊りで時間を稼ぎ、最後は自己犠牲で夜の帝王を亡ぼした。感動的である。夜から、突如太陽が高く登るのは、亡びた者から見た心象風景だ。三島由紀夫はこの手法を習い、「奔馬」の最終行で、夜の割腹なのに「日輪は瞼の裏に赫奕と昇った」と記した。太陽を出現させるために女が胸をはだけて踊るのは、天岩戸神話と類似しており、死霊はアマノウズメだ。日本神話の影響が窺え、世界観の広がりがみられる。死霊女の罪は、キリスト教の七つの大罪で、これを強く戒める内容となっている。他に「危ない場所に近づいてはいけない」「油断大敵」など、教訓に満ちた内容。ホラー・コメディという新分野を切り拓いた業績も大きい。世界で最も過小評価されている映画…、かもしれない。再評価の日は来るのか。