<ネタバレ>傷害前科2犯で、複数の人を斬って懲役たった3年。寛容な判決で .. >(続きを読む)
<ネタバレ>傷害前科2犯で、複数の人を斬って懲役たった3年。寛容な判決ですね。それはともかくも脱獄がメインテーマ。最初の脱獄計画は橘の意に反したもの。チクルわけにもいかず、巻き込まれるのは確実で、そうなれば刑期が延びる。母親が病気に1日も早く会いたい。煩悶する橘。だがそれも老囚人の機転によって脱獄計画は流れ、橘の危惧は杞憂に終った。ほっとしたのも束の間、屋外の伐採作業に向かう途中のトラックから一緒に手錠をつないだ権田が飛び降りた。橘も飛び降りざるをえなかった。途中で橘の弁護士の家を襲い、権田は保護司妻木の妹を傷つけた。それは自首しそうな橘を追い詰めるためだった。トロッコを見つけて漕ぐが、ブレーキがきかず飛び降りる。汽車に手錠を轢かせて切断に成功。その反動で権田は滑落し、怪我を負う。一人で逃げようとする橘に聞こえたのは意識を失った権田の母親を呼ぶ声だった。権田の孤独の心を知った橘は放っておくことができず、背負って病院に運ぼうとする。途中で猟銃を持った妻木に会う。橘の話を聞いた妻木は権田を馬橇で病院にで運ぶことにする。橘の不幸な生い立ちが随時挿入され、感情移入できるようになっている。悪い人ではないのだが、やくざ稼業に身を落し、渡世の仁義で人を斬るはめに。最大のサプライズは老囚人の正体が8人殺しの鬼寅だったこと。牢名主は自分は鬼寅の義兄弟という触れ込みで大きな顔をしていたのでたじたじとなる。うまい演出である。全体に無駄が無くテンポが良い。橘は人間性を取り戻し、妻木も人間を信じる心を取り戻す。良い話です。原作は1597年に出版された小説で1959年には日活で映画化された。本作品は1965年の東映のリメイク版。その際原作の恋愛要素を排除して、母恋と脱獄物語に徹している。映画はヒットしたのでシリーズ化された。だがそのせいで不幸になった人もいる。連続ピストル射殺事件の犯人永山則夫の本籍地は網走市呼人番外地だった。網走刑務所で囚人の子として生まれたのではないかと疑われるのを恐れた(実際からかわれた)彼は戸籍を見られそうになると職場を変えた。仕事が続かず、やむなく窃盗をするようになり、あるとき偶然に米軍宿舎でピストルを盗み、その後の犯罪の悲劇の元となった。ちなみに橘より永山の成育歴の方が遥かに悲惨で痛ましいです。