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<ネタバレ>ブリュノは永遠に子供だ。生まれたとき、どこかに何かを落としてしまった。彼がもう少し賢ければ、死と金の狭間を漂いもう少し裕福かもしれない。もう少し愚かであれば緩やかに、長い時間を掛けて破滅するのだろう。
心に道徳や倫理という概念を持たない人間を子供であるとすれば、子供という人間は道徳や倫理を持たないだろうか。そうか、多くの子供は確かにそれらを全て持ちはしない。赤ん坊から子供になったその瞬間の何も備えていないまっさらな「子供」がそれらを持たない。少しずつ人間の心の肝心なものが理解できてくるにしたがい、大人びてくる。
どうやら二元的な判断はできない。こうなると大人の定義とはなんなのか。という背面にある事実に我々大人はたじろぐ。が、きっと身体が成熟していることや老成していると言うことではそれはあり得ない、と断ずることが出来ればまずは自分が子供寄りではないんだろうという安心感は得られる。
安堵感、この映画がもつ強すぎる情調に不快感や不安感を持つことに気づくと同時にそこに至る。きっと好転しないであろうブリュノの人生に、哀れみを感じつつも白眼視するこの感情も大人のもつまっとうな正直な感覚だと思う。周縁に哀れみや寂しさだけしか彼に向けない、彼と同じように何かを落としてきてしまった人間達が永遠に彼らのような子供達を再生産し続ける。叱責や黙殺のような浄化機能をそれこそ道徳や倫理にしたがって正常に使いこなす社会は、それを作るのは大人達であって彼ら子供達ではない。
そして子供達が身体だけ成熟して作り上げたコミュニティは、とても社会とは言い難い裏社会のような共棲集団であるが、それはこの映画の中の絵空事ではない。子供達は永遠に子供達を作り続ける。きっと抜け出すことが出来ないであろうその輪が、この社会のみえにくいどこかにあることを思い出すことが出来た。
と言うわけでなかなか面白い。