なかなか面白い。ロメロの監督作品がどこかセンス的にずれた方向 .. >(続きを読む)
なかなか面白い。ロメロの監督作品がどこかセンス的にずれた方向に行きそうになっていた前作からかなり本人の有り様に近づいたという感覚を受ける。
80年代的な末世感を2000年以降に作り出すのは容易ではない。現在の末世感の無さの大きな要因の一つである、2000という数字を超えた時間軸的な不可逆的変位と、ネットの一般的道具化による(不完全、不明瞭、恣意、怪しさは成り立ちとして不可避的包含要素ではあるが)有り得ないものに対する証明の容易さという二つの障壁がある。しかしそれを、障壁それ自身を使うことによってうやむやにしてみせる事に何とか成功している。
ゾンビ映画にあった、1999年に向かってこういう事が起こりうるんではないだろうか?と映画を見ている2時間の間に一瞬でもそう思わせることに成功させていた時代性は今は存在しないが、終わることではなく何が始まるかよくわからないという漠然とした不安と、ネットというものが生活に必要以上に入りすぎてしまっていることを上手に使った設定は、そこを過剰に意識させない方向に誘導する。このことで効果的に適度な恐怖を味わえた。
主観映像の手法を採ってはいるが、かなり映画的な見せ方で構成されて音楽まで入ってしまう。こういう形でブラッシュアップしてきたというのは、この表現方法がこの方向にこなれたと見るか、味を薄くしたと見るかは微妙なところで、結果として見づらい映画になってしまえば主観映像としての演出を抑制した方が良かったと思ってしまうだけに、この映画のさじ加減は巧妙なのかもしれない。
キャラの立ち方や、世界観の構成の仕方はさすがに面白い。わざとらしいし嘘くさすぎる設定も話の面白さで鑑賞中に忘れることが出来るし、前作よりは楽しめるように思う。またグロテスクな表現も、リアルさが抑えてあるため恐怖そのものに意識を集中できる。
時々、普段は普通の人だがその手の映画で属性がむき出しになってしまう人がいる。そういったごく少数のスナッフを見たい的な願望を抑えられない人を、見透かすような残酷でしかない描写があまりない。そういった面でもゾンビ映画としてだけではない軽めの恐怖映画ベンダとしての手練手管が実に手堅く、安心して恐がれる良くできた映画だ。