<ネタバレ> 新しい季節が始まる。桜が飽きずに花びらを降らせてくれるのを .. >(続きを読む)
<ネタバレ> 新しい季節が始まる。桜が飽きずに花びらを降らせてくれるのを眺めて、窓枠から教室の中に目を移す。新しい学校に、新しい仲間、新しい恋もきっとやってくるんだろう。このクラスの中に同じ中学校だった友達は居ないけど、三五人は気がつけば友達になっているに違いない。
いつもと違う匂いの教室で、一人では心細い。とりあえず前に座っていた西山に声を掛けると「ん?俺は西山。ニックって呼ばれてたから君もそう呼んでよ」と前からの友人であったかのように気安く返事をしてくれ、ちょっとひるんだ僕は安心したのだった。ハードロックが好きなんだという彼と話題が合ったのも幸いして、その日のうちに僕らは長い時間を過ごす友達になれた。
僕らの席は掃除箱と呼ばれていたモップやバケツが入れられたロッカーの前で、一番後ろの窓側という一等地に有ったが、その対角線の終点に彼女が居た。担任の先生が挨拶やジョークを交えた注意事項などを話している間は気付かずにいて、お昼には最初の登校は終わってしまったけど、ニックはしっかり彼女を見つけていた。
数日だけ続いたオリエンテーションだとか挨拶だとか、そう言う時間を過ごすうちに、彼女に向かう視線はニックだけじゃ無く僕の視線も向かう事になって、少しずつ話す仲間も増えてきた。
もう授業が始まる頃の帰り道に、ニックは彼女の事を話題に出すと、実は僕も、っていうやりとりになった。
やっぱりか。君も良いとか思っちゃった訳ですか。などと自分だけが見つけた原石が、じつは同時に誰かが見つけていたものだったかのような言い方に思わず「彼女をうちの学校に連れてきたのは彼女自身だよ」と突っ込むと、イヤイヤそうなんですがと二人笑いあった。後に分かったが、同じように想っていたクラスメートは多かった。
とか言う記憶力バッチリ多感な時期でさえ、一瞬で一三人分のクラスメートの名前を覚えていただろうか(いや覚えていない)。二時間ちょっとの映画で一三人。悪役と女房を含めて一六人である。覚える事を放棄した私に怖いものは無い。血しぶきや意味不明な演出もすっ飛ばして痛快に楽しんだのであった。
顔しか覚えていないけど、最後の方にはもっと居なかったっけ?的な勘違いを起こし大変満腹な出来だった。とにかく勧善懲悪は気持ちいいのである。
で、最後には玉砕するのである。友人も私も。