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<ネタバレ>期せずして劇場型犯罪になってしまった銀行襲撃。かなり間抜けな強盗をパチーノが演じる。序盤、これはコメディなのかと思えるシーンもあるが、演出がパチーノの人間味にフォーカスして行き、人質の銀行員たちも彼に共感しておかしな風景が展開する。中盤でパチーノの「愛人」が登場するあたりからストーリーは悲喜劇の様相を帯び、サルが国外の逃亡先に「ワイオミング」を指定するところではすでに笑えなくなっていました。実話ベースらしい。生中継がメディアとして活躍し始めた頃の事件という意味では日本の「よど号」や「浅間山荘」にも被るのだけど、政治思想に直結しているそれらの事件と違い、こちらは庶民的な社会状況を背景にしています。ベトナム帰還兵の精神衛生、刑務所環境、ゲイ、同性愛結婚、犯罪者を盛り立てる野次馬たち。それらをひっくるめてひとつの作品の中でごった煮にした印象だけど、鑑賞後に残る倦怠的な苦さは当時の米国社会そのものだったと想像できる。邦題は「狼」。原題は「犬」。でも、観終わった感想は「迷える羊」でした。