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<ネタバレ>「攻殻機動隊」のアニメは2種類ある。押井守が監督した2つの映画と、神山健治が監督した2つのTVシリーズ。設定は同じだけど、テーマや語り口が違います。個人的には、うんちく台詞を羅列させる押井作品より神山作品の方が好きです。 押井作品は電脳と義体がもたらす情報ネットワーク環境を近未来の社会モデルとして提示したことが衝撃的でした。それに対して神山作品は、高度にネットワーク化された社会における情報深度の平均化・並列化と個のアイデンティティの関係を実験的に見せる。言葉にすると小難しい感じだけど、公安9課の個性的なメンバーが織り成すエピソードも楽しめるシリーズです。本作はシリーズの延長上にある作品で、少佐(草薙素子)が9課を去った2年後という設定。その間の9課組織の再編や主要メンバーの人間関係が描かれていて、シリーズのファンとしては興味深く観られます。まず、ドグサが隊長になって組織を率いていることがアクセント。経験と戦闘力で勝るバトーとの関係が気になるところで、そこを綴る脚本が大人の味わいです。少佐にも見せ場は作ってあり、タチコマの復活などは嬉しく微笑ましいエピソードだった。TVシリーズで深めてきた「STAND ALONE COMPLEX」の概念をベースに、並列化された集団無意識が少佐の個性を苗床にして新たなゴーストを発生させたような描写だった。それはネットワークが新しい命を誕生させたことと同義であり、「攻殻」の世界観の中でも革新的な出来事だったと思う。ちなみに本作は、最近3D版が劇場で公開されてそれなりに動員を取ったようだけど、初めて観た人は思いっきり置いて行かれたと想像します。