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<ネタバレ>若松監督の追悼放送で鑑賞しました。映画メディアには色々な側面がありますが、この方の作品は常にエンターテイメントとは対極の場所にあります。何かを訴えるというレベルでは無く、暴いて抉るって感じです。その追い込み方は恐れ入ります。
本作ですが、監督本人の意図は別にして、反戦映画という範疇には入らない気がします。ラストにヒロシマや長崎の映像や戦死者の数がテロップで表示されますが、本編と繋がっていないような違和感を覚えました。
私にとってのキーワードは「御国のために」です。「御国のために」送り出した亭主が形容も難しい姿で帰還し、妻は「御国のため」に食欲と性欲と排泄の世話をする。「亭主のために」という言葉は聞こえてきません。その亭主が「御国のために」やっていたことは中国の婦女子を凌辱することで、軍神と祭り上げられても呵責に苛まれる状態。
世間からは軍神と帝国婦人の鑑だったりする訳ですが、内実は「御国のために」蝕まれて行く夫婦です。「御国のために」やっていたことを現代に映画化して、その内実を伝えること自体は、直接的には意義を感じません。今、日本が戦争状態になっても、同じ状況が現れるとは思わないから。でも、日本人の悪しき体質である、本音と建て前の使い分けが最も悪いカタチで現れた例が「御国のために」だったと思います、カタチこそ違え、その体質は現代の日本を相変わらず不自由な国にしているような気がしてならない。それを教訓としたい映画だと思いました。
タイトルのキャタピラーは「芋虫」って意味なんですね。乱歩の同名短編をモチーフにしているらしいのですが、そのまま「芋虫」ってタイトルでも良かったと思います。その昔に「ジョニーは戦場へ行った」という映画がありました。四肢を失くした兵士という共通項があります。名作と言える作品だと思うし、真っ当な反戦映画ですが、本作を観た後では随分とキレイな作品だったなぁと思いました。[良:1票]