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<ネタバレ>史実を真面目に描いた作品という印象です。米軍によるサイパン島占領後も、少数で抗戦を続けた大場大尉の部隊が描かれる。視点が日本側・米国側にほぼ均等に割られている構成は新しい。【米軍から見た大場大尉】探索の目を逃れ、時に欺き、米軍を翻弄した策士。度重なる懐柔にも応じず、終戦を迎えても戦う意思を捨てない兵士の鑑。神出鬼没さがフォックスと形容された。【大場隊の実情】玉砕覚悟の総攻撃で生き残る。当初は「一人でも多くの米兵を道連れにする」ことをコンセプトとしたが、民間人の保護に主旨を変える。やがて民間人を米軍に委ねるが機を逸して玉砕も自決も出来ずに抗戦の構えを取る。戦争終結を告げられても去就を決断できず「上官の命令があれば」との要望を出して投降に応じる。 この両者の認識の違い(というか、米軍の勘違い)を検証するような内容でした。米軍からは見えない部分に日本兵の悲劇が潜んでいます。彼らは抗戦したかったのでは無く、その選択肢しか持っていなかった。「玉砕」と「自決」が美徳だと刷り込まれた兵士たちが命を惜しんで葛藤する様は、さながら漂流者のようです。竹野内豊が演じる大場大尉が自分は特別なことをしていないと最後に言ってましたが、私も同感です。彼に感情移入するような作品でも無かった。第二次大戦中、日本軍だけにあった固有の慣習が「玉砕」と「自決」でした。それは軍人だけでなく民間人をも侵食していた。本作にも自決シーンがある。追い込まれた状況の中で命を断つ場面を悲劇的に見せるより、なぜ日本軍にそのような慣習が生まれたのかを見せて欲しいと、いつも思う。あれは責任放棄と命の無駄遣いでしかない。誰が、どんな思想で広めたことなのか? そこを総括しない限り、日本の戦争映画は片手落ちという気がしてならない。