<ネタバレ>主人公は世界チャンピオンにまで登りつめたボクサーだけど、家内 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>主人公は世界チャンピオンにまで登りつめたボクサーだけど、家内制手工業でボクシングをやっていることに驚いた。その家族仕立てが原因で一度は挫折し、やり直して成功する。簡単に形容するとそんなお話でした。ジャンキーの兄を始めとして、息子たちを溺愛する気丈な母親、見分けがつかない7人(だったかな?)の姉妹たちがボクシングのマネジメントに口を出す。「外野がうるさい」状態です。家族の繋がりは無条件の信用の証でもあるが、同時に甘えの構造でもある。ストーリーの前半はそれが悪い方向へ転がり、チーム体制は崩壊します。出所した兄を、周囲に反対をおして受け入れる主人公。不満を募らせても家族から離れない彼のスタンスは、実はプロとして甘っちょろく見えました。リングで殴り合うような商売をやりながらも、家族に寄り添う小市民という印象です。本作はその姿勢を肯定も否定もせずに追って行く。主人公の恋人が母親たちと喧嘩するシーンがあるが、言い争っていることの内容が幼稚園レベル。結局、家族まわりの心情的なもつれなんて、とても次元の低い話なんですね。この家族は全員がお互いを大切に思っていました。兄の出所祝いは感動的でした。それは家族にとって最も基本的な、そして最も大切なことです。そこさえ揺るがなければ、多少の問題は乗り越えて行ける。振り返ってみると、ボクシング映画というよりは、ひとつの家族像を描いた作品でした。エピローグに兄が弟を称えて涙ぐむ短いシーンが挿入されます。唯一、これが狙ったシーンだけど、狙い通りに泣かされる。兄役のクリスチャン・ベールのオスカーは頷けます。ボクシング映画は役者に肉体の試練を課す作品が多い。本作もそのひとつ。主演のマーク・ウォールバーグは正統に体を作ってましたが、クリスチャン・ベールは元ボクサーにジャンキーの要素を加えていて、大丈夫かと思えるほど病的に見えました。体を作る膨大な時間を役柄に込めるので、演技も自然と迫真の力を帯びるのだと思いました。