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<ネタバレ>もしかするとコロンボ作品中唯一犯人を逮捕できない作品ではなかろうか? もう殺したことすら覚えていないかもしれない……それでもあくまで筋を通し犯人を追い詰めようとするコロンボはポアロとは違うようだ。だが身代わりにたつダイアモンドの決意を聞いて「そう、それがいいねぇ……」と漏らすところ、コロンボの人間味にほっとさせられる。人間描写が本当に見事なのだ。例えばあれだけ芝居にこだわっていた犯人がダイアモンドのニセの告白を聞くや「あなたがいないとダメ」と芝居から降りる決心をしてしまうところなど、殺された夫にしたらあんまりな話だが、哀れな元スターの醜くもあり美しくもある心を深いところから描ききっていると思う。これは並の観察力で書けるものではない。ラストで犯人がたった今あったことすら忘れたような顔つきで自分の若い頃の映画に見入っている場面ももの悲しく、印象的だ(まるでこのまま死んでしまうかのような気がする)。コロンボの魅力は謎解きや推理もさるところながら、より本質的にはコロンボを中心とする人間たちの魅力とその描き方にあると思う。脚本家が変わってしまった「新コロンボ」が全く輝きを失ってしまったのもそこらあたりに原因があるだろう。 あと他の評者の方の「なぜ出資を断られる前から殺人の用意をしていたか」という疑問だけれども、夫は「わしが反対していることは知っているだろう」と言っているので以前から猛反対していたことがわかる。だから「今度反対したら殺してしまおう」というつもりだったと思われるのだが(もちろん賛成したら殺す必要はない)どんなもんでしょうか。