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<ネタバレ>あ~、泣いた泣いた。劇場でこれだけグズグズ鼻に来てしまったのは久し振りです。泣ける映画=良い映画という訳では勿論ないですが、素晴らしく、また悲しき映画であったと思いました。
恐らく方向性はキューブリックの『2001年宇宙の旅』を目指したのだと思います。オープニングのシークエンスの音楽が、同作の猿人がモノリスに触れ進化するシーンや、ボーマン船長がスターゲートをくぐり、より高次の存在=スターチャイルドに進化するシーンの音楽と似ていますし、なにより猿が人間へと進化することの罪を描いた作品でもあるのですから。
本作で猿たちは自らに不可侵のルールを設定しており、それは“Apes do not kill apes”というフレーズとして度々挿入されます。人間と動物の違いは何か?という問いに対し、一つの意見として、“人間だけが同族同士で殺しあう。他の動物は同族を意味無く殺さない”という意見は良く耳にしますね(実際には一部の動物は同族殺しもします)。少なくともこの映画では、人間性を得るということは、「同族を殺すこと」=「戦争をすること」として捉えられている。
大変悲しかったのが、最後にシーザーが、猿たちの集団でファシストになってしまったコバを殺す場面です。コバも味方の猿を殺してしまいますが、それは人間たちを殺られる前に殺るという非常にラジカルな思想に基づくものでしたが、シーザーは人間との共存を望んだのにも関わらず、同族を殺さなければならなかった。
リーダーのシーザーが同族を殺し、猿が人間と対等になったことで、このシリーズは新たな局面を迎えることでしょう。最早、猿たちは「コミュニティは皆家族」と言う様な、本作のオープニングに描かれる平和な理想郷は恐らく二度と築けない。
猿たちは最後に夜明けの前に立つ。その夜明けは明るいが、それは血塗られた猿たちの歴史の始まりに過ぎないのだと思います。そして全ての争いは他者への無理解・他者とのすれ違いによって生じることまでも丁寧に描いている。猿の進化を、人間が大地に生まれてから連綿と続いてきた戦争の歴史に喩えて描いた、新しい戦争映画の傑作だったと断言します。[良:1票]