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<ネタバレ>カオスの権化の様な大伝奇物語もいよいよ終盤、というか原作は中里介山の死去により決着がつかないストーリーの大漂流のうちに未完、それを映画としてどのように閉めるのかに興味が湧きます。 前二作に続いて相変わらずの怒涛の様に進行するストーリー、でも今作では新規の登場キャラがあまり多くないのでまだ判りやすいかなと思いました。駒井能登守=東千代之介の暗殺を謀る大悪役の神尾主膳=山形勲に雇われ机龍之介=片岡千恵蔵、その機会を狙って待機中でも入手した名刀を試したくて辻斬りに励む、ほんとこの人ビョーキです。今回も神尾主膳の悪辣ぶりはキレまくっていて清々しいほどでしたが、駒井能登守謀殺に失敗して失脚してからは全く出番が無くなってしまいます。この三部作ではいろいろなキャラが登場するのですが、どの人物も中途半端にストーリーから消えてゆくのはどうなのかなと思います。逆にこの物語は宇津木兵馬=中村錦之助の成長物語の要素が強かったのかなと思いますし、ラストではあれほど憎んでいた龍之介を因縁から救ってやらねばという親鸞聖人みたいな心境にまで達しますが、その手段はやはり斬ることだとなるところは、さすがブレません。対する時代劇史上で最悪級の怪物キャラ机龍之介ですが、暇になれば辻斬りが趣味の様なサイコパスキャラもブレなかったですね。そんな龍之介も終盤では黄泉の国の幻影に苦しんだり捨てた我が子への思いに苦しめられたり、因果応報が襲ってくる仏教的な描写が目立ちます。この三部作では肝心の龍之介のキャラの掘り込みが浅く、観る者にはこの男を理解するのは困難なわけですが、それがかえって龍之介の怪物性が濃くなる効果が出ちゃったのかなと思いました。 未完の原作なのでラストは当然オリジナルなわけですが、もうこれしかない、という幕の閉め方でした。