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<ネタバレ>全怪獣映画のまさに始祖にして頂点、これが1930年代に撮られた映画だというのは信じ難いぐらいです。ストーリー自体はあまりにも有名で、南海の孤島に怪獣が生息していて文明社会にまで遠征して大暴れするというプロットは東宝特撮などの日本製怪獣映画の定番となりましたが、ハリウッド製怪獣映画には類似したパターンは他に見当たらない。そういう観点からは、もっとも本作の影響が顕著だったのは日本怪獣映画だったのかもしれません、円谷英二も『キングコング』を目標にして『ゴジラ』を撮ったと述懐していますからね。またストーリーの骨幹はまさに“美女と野獣”で、怪獣が人間と美女を張り合うという言ってみればアダルトなテーマは他の怪獣映画には見られない独特なものでもあります。これにはコングが巨大なゴリラという擬人化し易いキャラだということもあるのでしょう。エンパイア・ステート・ビルの天辺で戦闘機の銃撃に倒されるラスト、その転落間際の切なささえ感じてしまう表情には、どうしても自分を受け入れてくれなかったアン・ダローへの哀切な感情すら見てしまうのは、私だけでしょうか。 全長版というかカットされたシーンを復元したバージョンには、コングが髑髏島の住人を食べたりNYで女性を窓から地面に叩きつけて殺したりする残虐シーンがあるそうです。残酷すぎるということで当初カットされたそうですが、そういうコングの獣性が薄められた現在のバージョンの方が素直にコングに感情移入できていいんじゃないでしょうか。ピーター・ジャクソンは2005年のリメイクで、“残酷コング”ではなく谷底に落ちた船員たちが蟹蜘蛛なんかに喰われるオリジナルでカットされたシーンをきっちり再現しています。そして気が付いたのは、このピー・ジャク版コングにはオリジナルを忠実に再現しているカット割りが多々あることでした。円谷英二とは世代がかなり違うけど、ピー・ジャクもまた本作をこよなくリスペクトする映画人の一人なんですね。[良:1票]