<ネタバレ>テューダー朝とは比べ物にならないけど、スチュアート朝もけっこ .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ>テューダー朝とは比べ物にならないけど、スチュアート朝もけっこう宮廷内はグチャグチャでなかなかのものです。登場人物はまずアン女王、英国の歴代女王としてはもっとも影が薄く、実際にも明敏な知性や決断力を持ち合わせてはいなかったみたいですが、治世中にはグレートブリテン王国(スコットランド王国との正式な合邦)が発足したりしてそれなりに国勢は伸長しています。そして彼女の幼馴染でもある筆頭女官のサラ、彼女の夫はマールバラ公ジョン・チャーチル、そう英国史上最良の軍司令官にしてウィンストン・チャーチルやダイアナ皇太子妃のご先祖様です。アビゲイルはサラの従妹で、彼女を頼って宮廷に仕官してきました。この女王とサラの関係がなんとも生々しいんです。即位する前から苦楽を共にしてきた親友みたいな感じで、女王に対するツンデレな態度がもう堪りませんし、さすがにこれはフィクションでしょうが二人はレズ関係なんです。いかにも策士といったレイチェル・ワイズと、ただのおばさんにしか見えないオリヴィア・コールマンの対比が面白い。オリヴィア・コールマンは普通のおばさんみたいなのに突然女王らしい威厳を見せるところなど巧みな演技、ヘレン・ミレンに続くクイーン女優の誕生ですか。ルックスからするとヴィクトリア女王役にも最適じゃないでしょうか。カメラ・ワークも独特で、魚眼レンズを使ったカットが頻繁に使用されているところが不思議な感覚です。全編を八章に分けたストーリーテリングなんかはどことなく『バリー・リンドン』を彷彿させられます、時代設定もほぼ同時期ですしね。でもアン女王には配偶者(王配)がいたのになぜか登場も言及もなく、まるで独身みたいなのが不思議。まあこの撮り方の方が、女王の孤独が強調されているとも言えますが。 面白いのは当時の宮廷政治の状況で、このあたりが現在まで続く英国議会政治の始祖と言えるのでしょう。一応トーリー党とホイッグ党という二大政党の体制ですが、議会が開催されていない時は宮殿であひるの賭けレースに興じたり、なぜか素っ裸になった大臣にみんなでトマトをぶつけて遊んだり(なんかの罰ゲーム?)、まるでガキの集団みたいです。議員といっても全員貴族、当時の上流階級の退廃ぶりが窺えます。この宮廷政治や外交政策の決定に、サラやアビゲイルの助言が影響力を持っていたとは史実とはいえ恐ろしくなります。[良:1票]