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<ネタバレ>これはいろんな意味ですごい映画です。 まず製作当時の東映という会社が置かれていた状況ですよ。『山口組三代目』シリーズが兵庫県警の逆鱗に触れて本社やプロデューサーの自宅に家宅捜索が入っている最中に、社長の岡田茂が笠原和夫に大号令をかけて脚本を書かせて製作したのが、この映画ですからねえ。現在じゃあ絶対に考えられないことですし、東映というか東大卒のインテリとは思えない岡田茂の、反骨精神というかがめつさにはもう驚くしかありません。その反体制ぶりがウリだった深作欣二や笠原和夫でしたが、実は岡田茂の度はずれたアナーキー体質に引きずられていただけだったんじゃないかと思います。 そして笠原和夫が書いたストーリーが強烈、ここまで赤裸々に警察と暴力団の癒着を描いた映画はこれからも決して出現することはないでしょう。菅原文太と松方弘樹の広島弁のやり取り、そして警察や暴力団の内部での会話も、もう全編啖呵のぶつけ合いの様相を呈しています。有名な川谷拓三が取り調べられるシーンはもちろんですが、“こんにちは赤ちゃん”がTVから流れる部屋での刺殺劇がまた強烈な印象を残してくれます。金子信雄の狡猾なタヌキ市会議員はもう彼の伝統芸みたいなものですけど、風采に似合わず強面の佐野浅夫が演じる刑事もなかなかいい味出していました。という感じで、脇を固めるキャラが立ちまくっているわけです。そしてちっとも勧善懲悪(いや、この映画に“善”へ分類される登場人物はいなかったですね)とならないカタルシスのかけらもないラストも、日本映画としては珍しいといえます。 笠原和夫が「自分の書いたシナリオで最高傑作」と語っていたそうですが、それは納得します。[良:1票]