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<ネタバレ>シリーズ八作目にして最強の敵である愛染・天知茂が満を持して登場、今まで二作に顔を出している若山富三郎もいるけど、役者の格は別にしてもキャラ付けからして迫力が違います。旧新東宝の残党組としては丹波哲郎は別格として天知茂・菅原文太・吉田輝雄がいわば三羽烏でありますが、けっきょく映画界で大成したのは文太だけで天知が70年代にはTV界に活躍の舞台を移してしまったのは残念至極です。愛染は大塩平八郎の残党を率いて老中・水野忠邦をつけ狙うテロリスト集団の頭領、復讐のためなら江戸を焼き払うことも躊躇しない過激さは、当時の学生運動が投影されていることは間違いなしでしょう。肝心の水野へのテロは見抜かれていて失敗、自ら放った炎を遠景として狂四郎に討ち取られて屍をさらす愛染とその一味の姿は、その後の全共闘運動の末路を予言しているみたいです。 というわけで本作に関しては天知が主役で雷蔵ですら脇で盛り上げ役に回っているような感じすらします。本作の狂四郎は妙に品行方正で愛染の方がはるかにニヒルなのがヘンな感じです。撮影中に雷蔵は「これじゃ天知茂が目立ちすぎ、主役は俺だ!」と怒ってマジにスタッフと険悪になったそうですが、本来温和な雷蔵をここまで嫉妬させた天知茂という役者は、やはりただ者ではなかったんでしょうね。