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<ネタバレ>モダニスト増村保造の面目躍如といった感じのキレキレのサスペンスです。映像も当時としてはかなりモダンで、増村らしい才気が感じられます。たとえば前半にあるバーのシークエンス、近景というかカメラのまん前でホステスが客を接待しているところを半身で捉えている、そして遠景では奥の席でヤマト自動車の馬渡が密談をしています、これが両者にきっちりピントが合っていて実にシャープです。タイガー自動車の企画課は倉庫みたいなところの二階にあって、そのロケーションを活かして上から下から観せるショットも多用されていて、こういうところもいかにも増村らしい。ストーリーも梶山季之の原作がしっかりしているから、タイガーVSヤマトのスパイ合戦のあの手この手を飽きさずに見せてくれます。まあ確かに、この映画の主役は田宮二郎ではなく高松英郎なんだと納得するしかないわけで、いくら高度成長期のモーレツ社員だと言ってもここまでくれば立派な犯罪者ですよ。当時はこういう生き方が肯定されていたわけなので、脱落してゆく田宮二郎の姿やラストの虚無的なセリフは世相に対する強烈なアンチテーゼだったろうと思いました。