最初に観たのはテレビ放送で中学の頃だったと思います。部屋で一 .. >(続きを読む)[良:1票]
最初に観たのはテレビ放送で中学の頃だったと思います。部屋で一人で観てボロボロ泣きました。それから二十数年の間に何度も観ていますが、今でも胸が詰まります。物書きと会って遊び回るくだりが、現代から見るとのっぺりしてだるく感じますが、そこを除けばテンポの悪さも感じません。「七人の侍」でボスを演じた志村さんが、この作品で全く違う男を演じて、この映画で初めて役者ってすごいなと思いました。公園で倒れて水を飲むときの子供のような瞳が忘れられません。生きることの幸せをどこに求めるか、それを「家族」とか「仲間」とかいったものに求める物語もあるけれど、この物語の主人公は息子に心の拠り所を求めるのもやめ、職場の仲間たちと目的に向かって心一つにして盛り上がったというわけでもなく、惹かれて止まない女性とも「ハッピー・バースデー」の歌のなか卒業し、自分の生きる充足感を決して他人に求めませんでした。二階から声をかけた息子のもとへ駆け上がりかけたものの、あっけなく「おやすみなさい」と明かりを消され置き去りになった主人公が、息子に何も語り残すことなく自分一人の「生きる」道を黙々と進み切った姿はカッコいいなと思います。ケータイをカチカチ常に誰かと繋がっている気分でいたい人たちにも、もし心に穴があるなら、この主人公の心のベクトルは穴を埋めるヒントになるかも。といっても「七人の侍」でも、この映画でも、ラストには「人は簡単に変われない」って姿が示されますが、そこを「そうそう、みんなそうなのさ」と甘えるか「自分はそうなりたくない」と願うか、それも生き方。大感動のままで終わらせないシビアな終わらせ方もニクイです。 【2014/7/23追記】ずっと引っかかっていることがあります。とっても小さなことなんだけど…主人公が夕日を見て美しいと感激する場面です。あの場面ですぐ「私にはそんな暇はない」みたいに歩み去りますけど、なんかそこに引っかかっちゃうんです。ラストで別の人が同じ場所で夕焼けを背景に立ちますから、それとなく意図することはあると思いますが「そんな暇はない」は足引っ張りに対してだけにして欲しかったかなー。僕も癌だけど、生きる残り時間のことについて思うのは、ストイックすぎるこの映画より、『ブレードランナー』だったりするのが不思議。[良:1票]