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<ネタバレ>バート・ランカスターって僕は『かサンドラ・クロス』くらいしか印象なくて、いろんな作品に出て有名だけどあまり存在感ある役者だとは思ってなかったんですが、この作品での寡黙ながらじっと見据えるような底力に印象を強く残しました。彼が裁判で演説してから釘付けでした。ヒトラーがなぜ持ち上げられて行ったかを語る下りは静かに恐ろしさを感じました。その後のロルフ弁護士の演説も、世界がいかに目をつぶってきたかを問う内容に寒気がしました。これが一番の山場と思っていたら、「ドイツ国民の力が必要だ」「大切なのは生き延びることだろ」と抗議される検事のエピソードも重い。「刑法の原則とはどの文明社会でも共通しています」のあとに語られ「何のための生存か?」と流れていく裁判長の弁は厳か。「世界中の人々に記憶してもらいたい、この法廷が必要だと思うのは…正義、真実そして…」三つ目に示される答えに重みが増す。判決が出てからも映画は終わらず、長い余韻の最後の最後にグサっと突き刺さる言葉。うーむ、考えさせられます。たとえ「みんなバカばっかし!」と思ったとしても、そのバカが社会の主流を作っているなら、自分もその流れの中で少なくとも逆らわずにいた方が生きやすいと思っている僕は、正義と生きやすさが比例しないから難しい。けれど、駆け引きだの場の空気だのに振り回されてグラついたりしない検事と裁判長に憧れるし、あんな風に生きられる自信が欲しいなと思う。 ところで、最期に残った疑問…『どの文明社会でも共通する刑法の原則』とやら「殺人を行わせたる者」ってのは戦争での殺しは原則外なんでしょうか? 戦争することが許される社会においての『人間の命の重さ』ってどういうものなんだろう?[良:1票]