<ネタバレ>ハードボイルド青春映画とでも呼べばいいだろうか。社会に足を踏 .. >(続きを読む)[良:2票]
<ネタバレ>ハードボイルド青春映画とでも呼べばいいだろうか。社会に足を踏み入れ、自分なりのサクセスストーリーを歩みはじめていたはずの二人の少年たち。彼らが、それぞれに過酷な現実に足下をすくわれ打ちのめされていく様が、徹底して乾いた視点で描かれていく。そのあまりの容赦のなさは、リアリズムというよりも、もはや悲観主義にすら見えるかもしれない。けれど夢敗れた者の目に映る世界とは、おそらくそんなものだろう。彼らの目に映るその世界。北野武はブレることなくただその一点ばかりを、憑かれたように丹念に描出する。この映画が青春映画の型を成しているにもかかわらずサイドストーリーとしての恋愛はおろか、過去の北野映画における石田ゆり子や国分亜矢らのような添え物的ヒロイン像すら描かないのはそれゆえだろう。北野はただ彼らの姿を、そして彼らが見る世界を、描くのだ。この作品以前の北野映画は大なり小なり「死」をその主題としてきた。昨日と今日の同じ風景の中に主人公だけがいないことでそれを表現した『あの夏、いちばん静かな海。』、あるいはやがて来たるべき死そのものを具現化した『ソナチネ』のように。けれど本作で北野武が一心に見据えているのは、生きるということだ。「俺達、終わっちゃったのかな?」「バカヤロウ、まだはじまってもねえよ」ラストの台詞は実に北野武らしい。北野特有の、きわめて日本人らしく、そして厄介なその照れ隠し。彼は、ふりだしに戻って自転車で校庭をグルグルと回るだけの二人の姿に、生半可な希望の光をさしこんだりはしない。ただありのままの姿をありのままに描くのみだ。先の未来なんてだれにもわからないとばかりに。それは照れ隠しであると同時に、力強いメッセージでもある。安直なハッピーエンドなんていらない。どれほどに打ちのめされようと彼らは生きているのだ。そして生きていくのだ。[良:2票]