<ネタバレ>社会派西部劇といった趣ですね。帰ってくるならず者がどれだけ悪 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>社会派西部劇といった趣ですね。帰ってくるならず者がどれだけ悪くて、かつてどんなことをしたのかは、実はどうでもいい。そいつが帰って来るということが起こす波紋が、本作の主題ですから。起こるであろう悶着を、保安官個人の問題として片付けていいのか、そいつは本当にほかの町の人には危害を加えないのか。結局仮定の話であり、そこには正論などありません。単純に正義とか悪とかいった言葉で片付けられないだけに、現実感があります。ほぼリアルタイムで進行するのも、物語のリアリズムを生かすためでしょう。
主人公の保安官は、苦悩しながらも“信念”を持った人間として描かれています。何となくドラマ『男たちの旅路』を思い出しました。少なくとも、信念を持つことは重要ではないかと思います。
本作の弱点は、当時のハリウッド映画の原則として、「主人公が勝利しなくてはいけない」という限界を破れなかったことでしょう。「力には力で対抗するしかない」という、いかにもアメリカ的な解決をとっています。しかしそれでも、新妻に助太刀させるという皮肉な結末を迎えています。人を射殺した彼女がこれからどんな人生を送るのか、それでまたドラマが作れそうです。そういう点からしても、一筋縄ではいかない深みのある作品でした。