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<ネタバレ>本来はクリスティの生誕100周年記念で製作された特番なのですが、『刑事コロンボ』の「殺人処方箋」や「死者の身代金」同様、今ではシリーズに含まれています。元が長編なので長所も短所も原作に負うところが大きいのですが、クリスティの処女作だけあって、それほどすぐれているわけではありません。
本作のミソは、ミステリの定番である「怪しくなさそうな人物が実は犯人」の逆を行く、「いかにも怪しそうな人物がやっぱり犯人だった」という心理的なトリックです。つまり、「怪しくなさそうな人物が実は犯人」という定石をこちらが知っていてはじめて効果があるわけで、それを知らない人が見てもあまり効果はなさそうです。犯人が自分を疑わせる行動を不自然にならないように「一事不再理」も使われているわけですが、この組み合わせもいいと思います。ただ、そのアイデアをうまく生かし切ったかどうかは疑問です。長編小説をドラマ化するには時間が短いので、人物の描写や人間関係がやや簡単に思えますし、ヘイスティングスがいきなりプロポーズするなど、思わず首をかしげるところもあります。しかし、最後に関係者を集めて解説するところなどはサマになっており、こういうところはさすがにうまいと思わせます。また、レトロな街並みや大道具・小道具も見ていて楽しく、丁寧な作りが大変よいです。非常に雰囲気がいいし、上品さが漂っている作でした。