<ネタバレ>序盤は記録フィルムも使っての状況説明ですが、非常にテンポがよ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>序盤は記録フィルムも使っての状況説明ですが、非常にテンポがよく飽きさせない。仲代達矢の語りもなかなかの名調子。このテンポのよさ、歯切れのよさが全編を貫いており、下手をすると収拾がつかなくなるような話をうまくまとめています。そのためか長さも気になりませんでした。
内容自体については、とにかく「見ればわかる」ことですが、陸軍の青年将校たちはやはり自分たちの目先のことしか頭になかったと思われます。そのあたり、大局を見て行動していた内閣の面々との対比も出ていたと思います。自分たちの体面や主義のためならば、国民や国体や天皇までも利用するという独善性。たとえば、天皇が終戦を決定したのは重臣にたぶらかされたからだと主張していますが、冷静に考えれば、現人神であるはずの天皇が臣下の者にだまされるものなのか。畏れおおくもその天皇を意のままにしようとしているくせに、都合のいいときには軍を動かすために「軍隊では上官の命令は絶対」と言う。利己的な小人の矛盾した行いであり、彼らの計画が頓挫したのも当然の帰結と申せましょう。とはいえ、そんな彼らを生み出したのも日本の政治家・軍隊であったわけで、そのあたりも突っ込んでもらえるとさらによかったと思います。
出演者で印象に残った人は多いのですが(というか多すぎる)、特記したいのは伊藤雄之助と小林桂樹。前者は常に悲壮な表情でセリフをまくし立てるよりも説得力があり、後者の徳川侍従はいかにも謹厳実直でこの人にぴったりの役でした。
まあなんにせよ、とにかく「面白い」映画であることは間違いないでしょう。その面白さの一因は全体からあふれ出ている熱気であり、それが熱に浮かされたような戦争末期の状況をよく現していたと思います。おそらく製作現場も、熱気にあふれていたのでしょうね。