<ネタバレ>「平治の乱」の時代を背景に、平家に代表される粗野な武士階級の .. >(続きを読む)
<ネタバレ>「平治の乱」の時代を背景に、平家に代表される粗野な武士階級の擡頭と、貴族階級と共に没落して行く平安文化の姿を、三人の男女の悲劇として象徴的に描いた作品とみる。もちろん、琴のつま弾き手である袈裟(京マチ子)が平安文化を象徴する存在で、おそらくは(自分を庇護してくれた)夫の階級の無力さ、以後の没落を予想し、権力で美の世界を牛耳ろうとする武士階級の隆盛を予測しての行動であろう。それでも、登場人物の誰一人として是認し得る行動を執れていないと思える辺りに、悲劇の悲劇である処の美学が美しく描かれているだろう。
終盤の公卿の屋敷を歩く三人の登場人物の背後の影、色彩が、それぞれの人物の心理をも顕わしているようで、観ていて息を呑む。色彩設計(近代美術館に作品も展示されている画家、和田三造が担当)も見事な、日本映画の傑作だと思う。この時代の日本映画の隆盛振りは素晴らしい。