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「東京物語」は大好きなのですが、これはあまり好きにはなれませんでした。
最大の理由が、山田洋次監督の思い入れのためか、「主観」が入っている気がすることです。
本作は東北大震災を受けて脚本に変更を加えており「今の時代の厳しさ」について少しだけ言及するシーンがあります。
それはとても尊いことですが、本作品には「最近の若いモンは・・・」という内容の台詞もいくつか登場するのです。
「東京物語」は説教くささとは無縁で、人の悲しさ、喜び、エゴを客観的な立場から描き、それでいて「自分も家族のためを思って何かをしてあげたい」と思える作品でした。
しかし「東京家族」には少々押しつけがましさと、説教くささを感じてしまうのです。
本作品に感じたのは「このような若者(家族)がいなくなって久しい」という監督の郷愁にも思える願望でした。
若者や今の時代に対しての「嘆き」が描かれていることに、自分は居心地の悪さを覚えたのです。
また全編に「小津調」が用いられているためか、テンポも非常に悪く感じます。
上映時間が「東京物語」よりも長い2時間24分で、決してこの長さが必要だとも思えませんでした。
本作ならではの良さもあります。
そのひとつが最大の変更点でもある、「東京物語」で故人であった次男の「昌次」が本作品ではほぼ主役といってよいほどの役柄だったことです。
昌次は父とあまり仲が良くなく、そのことが新たなドラマを生んでいます。
「東京物語」では昌次が亡くなったのは戦争のためでした。
「東京家族」で昌次を物語の中心人物とすることで、昌次が戦争のなくなった現代に生まれていたらどんな人物であっただろう・・・というIFを実現したものに思えるのです。
このことには、監督ならではの優しさを感じます。