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<ネタバレ>この映画は観終わってしばらくしてから、じわ~っと、こう胸の中に何かがこみ上げてくる、そんな映画です。邦題である「白鯨との闘い」と予告の映像を見て誰もが思うのはたぶん、巨大な白鯨と船乗りたちとの壮絶な闘いでしょう。ところがどっこいそうではないんです。白鯨の襲撃で母船を破壊され、やむなく小型ボートに退避、そしてひたすら海の上を漂流し続けるだけなんです。白鯨とはその後ほとんど闘いません。ほぼほぼ漂流しています。だから巨大モンスターと死闘を繰り広げるようなものを期待して観に行くと、肩透かしをくらいます。かくいう私もそんな一人でした。たしかに肩透かしはくらいました、くらいましたけどそれをマイナスにさせないだけの深さがこの映画にはあります。人々の生活に必要不可欠となっている鯨油。鯨油のために鯨を殺す。この世界の支配者である人間なら許される行為。鯨を殺し油を摂取し文明のひを灯す。そんな時代。しかしそんな傲慢な人間の前に一頭の白鯨が現れる。その白鯨は彼らから大事な船を奪う。わずかな水と食料で生死の間を彷徨うこととなった人間たち。白鯨は彼らの行く末を見守るかのように後を付いてくる。殺そうと思えばひと思いに殺せるのにそうはしない。なぜ?その答えはやがて分かる。その答えがこの映画の深さ。この映画の魅力。物語の終盤で捕鯨に人生を掛けてきた一等航海士と白鯨が対峙する。闘いが始まるのか!?そう思った瞬間、一等航海士は手に持った銛を静かに置いた。彼の中で何が起きたのか。人間のエゴを悟ったのか。とにかく彼は闘いをやめた。やがて生還した彼らは口封じを頼まれる。化物鯨の存在が、捕鯨産業に悪影響を及ぼすことを恐れてのことだった。だが、家柄や血筋に価値観を持っていた船長が査問会で述べたのは、真実だった。その後話は石油が発掘されたことをほのめかして幕を閉じる。分かりますか、この深さが。人間の愚かさが。私はそれに気付くまで少し時間がかかりました。ただR指定になるくらいキワどいシーンが、もっとあっても良かったんじゃないかな。なんか全体的に小奇麗なんですよね。まあロン・ハワードですからね。分かっちゃいるんですけどね。は~もったいない。