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<ネタバレ>偉人としての野口英世を描いた本やアニメは多いし、私も少年時代の野口英世を描いたモノクロ映画を子どもの頃見た記憶がある。左手やけどの不自由な身体と貧しい生活の中で、ひたすら努力精進することによって後の成功を収める、いわゆる偉人伝中の偉人としての野口英世であった。
しかし、この映画は単に偉人としてだけでなく、挫折や失恋も含めた「人間としての野口英世」を描いている。そして彼が世界で名を馳せたのも、実に多くの人の支えがあったことがよくわかる。
少年の多分な才能を見抜き、私財を擲って高等科の進学を勧めた恩師や手術の費用を集めた友人たち、医学の道を志すにあたって経済援助を惜しまなかった人たち・・・。
しかし、何と言っても母親の愛情だろう。我が子を慈しみ、叱り励まし育てる姿はまさに日本の母親像そのものである。なかでも、後半の息子に送った手紙のシーンは、涙なしに見ることはできない。
この母親野口シカを演じた三田佳子は何とすばらしい女優であろう。いままでにも、この人の映画やドラマを数多く見てきたが、どれも大変すばらしかった。
この映画に欲を言えば、なぜ清作が英世と名前を変えたのかという疑問にも答えてほしかったし、浪費癖と揶揄される実生活にももっとふれてほしかった。
「清作、左手をポケットから出せ」と母親が言ったように、映画も醜いと思われている部分にも・・・。