この映画が作成された頃の野村芳太郎監督といえば最高だった。「 .. >(続きを読む)
この映画が作成された頃の野村芳太郎監督といえば最高だった。「砂の器」「八つ墓村」と続き、この映画を挟んで「鬼畜」と次々と日本映画史上に残る名作を生み出していった。
事件の裁判を正面から堂々と描いた映画で、検察と弁護側の駆け引きもさることながら、証人の思い込みや捜査の見込み違いなどが公判を通して明らかになっていく。そしてその真相は?と映画のラストシーンまでまったく目が離せない。
また一人の男を姉妹で争う心理描写も実に見事であり、男女の愛が理屈通りの単純なものではないことがよくわかる。大岡昇平の原作が野村監督個人の力だけでなく、新藤兼人の名脚本と芥川也寸志の素晴らしい音楽とも結びついて生まれた名作だろうと思う。日本アカデミー賞に輝いたのも当然といえば当然だが、松坂慶子や渡瀬恒彦の汚れぶりも遺憾なく発揮されているし、大竹しのぶも「青春の門」での清純派デビューから、演技で見せる女優へと生まれ変わる一歩であったと思う。