<ネタバレ>いい映画に出会えて良かった!と心から思える作品でした。
雨 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>いい映画に出会えて良かった!と心から思える作品でした。
雨の日のバス停でケンカした相手が、実は友人の彼氏で、その後、魅かれ合って結婚・・・という、最初は、ただのベタな恋愛映画かと思って観ていました。その13年後、エレナは、仕事は順調なものの、ダンナとはすっかりマンネリムード。そんな時、乳ガンが発覚・・・。
これまでのラブコメ風のムードから、闘病などシリアスな展開になっていきますが、この映画が素晴らしいのはここから。病気による深刻な部分だけを強調して感動を強要するような安っぽい演出もなく、ダンナのアントニオや2人の子どもたち、母親や叔母、親友であるシルヴィア、ゲイの友達のファビオ、同じ病室のエグレなど、病気を通じて見えてくるまわりの人々の思いやりややさしさが心に沁みてきます。
浮気性で仕事もパッとせず、体型の変化に象徴されるダメ亭主が、妻の病気をきっかけに、彼女が自分にとってどれだけ大事な人であったのかに気付き、病室のベッドでエレナを愛するシーンは、ほんとに切なくて泣けました。そういうシーンのあとに、「実はあの時、起きてたのよ」と女子トークで盛り上がるエレナとエグレにクスッと笑わされ、その数日後、エグレのベッドが淡々と片づけられていく現実。
また、アントニオと結ばれたしあわせいっぱいな海辺のシーンと、終盤に病院へ向かう途中の回想シーンのつながり方の美しさなど、後半の、様々な悲喜のバランスが絶妙です。でもこの美しいシーンで終わるのではなくて、「えっ?このエピソードがラスト!?」という驚き。おかげで、泣きながら笑えて、最後には、なんだかとてもしあわせな気分になれました。そして、あらためて「奥さんを大事にしよう」という気になりました(笑)
エレナがその後、天に召されたのか、回復して元の生活に戻れたのかは描かれていません。この映画において、そんな結末はまったく不要で、素晴らしい家族や友人に囲まれたエレナは、その後の経過がどうなろうが、しあわせな人生であることに違いない、ということですね。
原題の「Allacciate le cinture」は、ベルトを取り付ける、つまり「シートベルトをお締めください」という意味らしいです。「人生の乱気流に遭遇したとき、そばにいてくれる人は誰ですか?」、自分の人生のシートベルト的な役割を果たしてくれる家族や友人がいれば、人生の乱気流も乗り越えられる、そういうメッセージなのだと思います。
ただひとつ、「あしたのパスタはアルデンテ」同様、この邦題、もう少し何とかならなかったのでしょうか?(笑)