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<ネタバレ>アメコミの悪役キャラとして完璧だったJ・ニコルソンのジョーカー。ヒース・レジャー版で彼は顔のペイントも粗い三次元のリアル狂気として現実に現われ、ついにホアキン版では「すぐそこにいる」ジョーカーとなった。
「お前、キモいんだよ」との言葉を投げつけられるアーサー。ブリーフ一枚の痩せた身体を晒し、表情は自信無さげでどたばたした不格好な走り方、的外れな空笑い。鬼気迫るようなホアキンの役作りに、ヒースのように自己を削り過ぎないかと心配になる。
アーサーがジョーカーへと変質し、群集を巻き込んで破壊行動へ向かう、そこにある種爽快に近い快感があるのを否定できない。炎上するゴッサムシティを背景にゆっくりと身体を起こすジョーカーは社会が生んだ悪意の果ての姿。オレンジ色に染まったその画を、禍々しくも美しいと思ってしまった。
ヒース・レジャーのジョーカーはもはや悩んでなどいなかった。絶対狂気の一個体だった。
痛くて無様な己の内面に呑まれて狂気を発症してゆくホアキンジョーカーもまた、伝説となるだろう。