私は日本人ですので、外国映画祭の審査員ほどにはジャパネスク・ .. >(続きを読む)[良:1票]
私は日本人ですので、外国映画祭の審査員ほどにはジャパネスク・ロマンに「おおっ」とシビれたりしないのですが。でも、この映像の幽玄なこと湿度の高いこと、目を瞠りました。ストーリーは「まんが日本昔話」をいくつか合わせたようなもので、驚くほどの展開は無いんだけれど、件の名アニメを実写したらこうなるんだろうなあと思わせるほど雰囲気が似ています。
廃屋だったはずの朽木屋敷に誘われ、いつしか凛とした豪邸に落ち着いているとき、こちらもいつの間にやら幻惑されているのです。明かりの灯る夕刻や、先代の兜の発する気や、妖女そのものの京マチ子らに金縛りに遭わされました。怖く美しかった。
戦が庶民らにとっていかに苛酷であったか、その描写も容赦なく厳しい。里に残した妻が槍の犠牲になる場面は俯瞰ショットで音も無く、素っ気ないけれどとても恐ろしい。
妻が遭遇した残酷さ、弟夫婦らが辿る愚かさと不条理、そして主人公が出会う異界。「昔話」のテーマがてんこ盛りの、見事な映像作品でありました。[良:1票]