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<ネタバレ>アレン作の中でも評価の高い本作を初めて観たのは20代の頃だった。好きじゃなかった。先行きに希望を持って生きたい若い年頃にとって、この作品の背景の不景気のやり切れなさや、ミア・ファローの薄幸な雰囲気・顔立ち・細い身体なんもかもが気を塞いだ。
映画スターと銀幕の中で夢を見る。でもたったひととき。その儚さが美しいとは思えなくて、むしろ気を持たせただけのように感じて、こんな思いさせるなよ、と思った。だってラストの彼女の呆けたような表情に現実と立ち向かう意志があるようには感じられない。映画にうっとりした後は、ああこの人、また現実世界に戻るんだ、あの暴力亭主のいる安アパートに。パートの職も失って、ほぼ詰んでしまっているセシリアの現実がひりひりと心に痛くてカンベンしてくれ、と泣きたくなったものだ。
霞を食って人は生きてゆけない。その霞が養分となっていればまだしもだけど、セシリアのその後はどうだったろう。
最近、また観た。やっぱり苦かった。映画からちょっと元気をもらったくらいでは、セシリアの現実はきつすぎる。