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<ネタバレ>ドキュメンタリーでその才能をすでに開花させていたポール・グリーングラス監督によって前作が凡作に思える程、見事に昇華させられた本作。手持ちカメラによる撮影が多く用いられて少々難ありだと思われた映像もスピード感と緊迫感が圧倒的に勝り各シーンに良い影響を与えています。砂浜をランニングするボーンとマリーが見るボーンの日記の内容が交互に映し出されますが、見る夢に悩まされ、なぜこうなったのか自分の過去さえ思い出せないボーンの焦燥感が上手く伝わってきます。かつての工作員仲間だった男との格闘シーンも従来のハリウッド映画のそれとは一線を画す出来です。しかしこれは雑、見にくいと思われたかもしれませんが、リアルさを重視し生々しさが上手く表現されてて正に手に汗握るものとなりました。キャスティングも見事でジョアン・アレンの存在感がとても大きかった。しかし特筆すべきはボーンの最大の仇であり、最高の好敵手となったカール・アーバンでしょう。登場から手際の良い細工をしてCIA職員を瞬殺。その射撃のウデまで披露してコイツは只者ではないと印象付ける。そしてあの市街地チェイス。ボーンとついに相まみえた瞬間のにらみ合い。鳥肌が立った見事な仕事ぶりにこの監督の手腕の良さを確信した。地球の裏側までやって来てもその運命は変えられない。車に乗ったキリルの姿をひと目見ただけで追っ手だと察してしまうその本能がやはりジェイソン・ボーンなのだ。その本能に従い、それでも諦めず過去を知ろうと前へ進んだマット・デイモンの演じたボーンは正に彼の一番の当たり役になったでしょう。[良:1票]