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<ネタバレ>とある医術革新によって、人間の平均寿命が100歳を超えた世界。しかしその裏側では、ただ臓器を提供するためだけに生まれてくるクローン人間たちという残酷な現実があった。世界から隔離された寄宿舎学校ヘールシャムのなかで、クローンであるキャシー、トミー、ルースという3人の若者たちもまた、普通の人間と同じく恋をし、悩み、傷付きながら青春を過ごしていた。だが、卒業とともに過酷な運命はそんな彼らを容赦なく呑み込んでゆく――。カズオ・イシグロの、そんな儚く絶望的なお話なのに何故か読み終えたあとは切ない気持ちにさせてくれる原作が大好きだったので、映画化された今作もかなり期待して鑑賞してみました。でも、DVDに記された収録時間100分という情報を知って、「あの濃厚な世界をたった100分で大丈夫なのか!?」と一抹の不安を覚えながら観始めたのだけど、残念ながら僕のそんな懸念は見事に的中してしまいました。何が不満かといえば、原作では3分の1を占めていたヘールシャムの描写が大幅にカットされてしまったこと。おかげで彼ら3人の関係がいまいち分かりづらく、後半の展開にまったく活かされてこなかった。もっと長くなってもいいから、原作の美点であるヘールシャムでの今にも壊れそうな主人公たちの瑞々しい青春の日々ををもっと濃厚に描いて欲しかったですね。そしたら後半の、自らに課せられた使命感と愛する人と共に幸せになりたいという誰もが願う平凡な希望との狭間で葛藤する彼らの心理がより浮き彫りになったであろうに。詩的で静謐な雰囲気は上手く表現できていただけに残念です。