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<ネタバレ>女癖の悪い父親とともに暮らす15歳の少年、チャーリー。何かとトラブルの絶えない父に愛想を尽かせた母親は、彼が赤ん坊の時に家を出たまま消息不明だった。学校にも通えないほど貧しい生活だったが、それでもチャーリーはそんな父との生活に満足していた。そんなある日、彼は地方競馬の競走馬を専門にする調教師デルと出会う。少しでも生活の足しにしようと、彼の元で働き始めたチャーリーは、デルの今の稼ぎ頭である若い馬ピートの世話を担当することに。そんな折、チャーリーの父親の浮気がばれ、激高した愛人の夫になんと父親が殺されてしまうのだった。天涯孤独となってしまったチャーリーは、馬のピートに深い愛情を注ぐようになる。だが、ピートは長いスランプから次第にレースで思うような結果を残せなくなってしまう。するとデルは、ピートをメキシコへと売り飛ばすと言い出すのだった。「ピートは僕の友達だ、それだけは絶対ダメだ!」――。そんな彼の意見などデルは到底聞こうとしない。どうしようもなくなったチャーリーは、ピートを連れ密かに荒野へと旅立つのだった……。家族をなくし孤独の中に生きていた少年とピークを過ぎた一頭の馬との逃避行を雄大な荒野の景色の中に描き出すロード・ムービー。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、これが丁寧な演出の力が光る佳品に仕上がっておりました。少年と馬との友情物語という、これをディズニー辺りが撮れば心温まる安定のファミリー・ドラマになりそうなものだけど、本作は全く違います。ここで描かれるのは、圧倒的な貧困の現実。主人公がどれだけ不幸な境遇にいようが、誰も助けてくれたりなんかしません。せいぜい働き口を紹介する程度で、時には主人公のなけなしの金を毟り取る輩さえ出てくる始末。それは馬も同じで、「競争馬はペットじゃない。勝てなくなった馬は処分する」という厳しさが徹底しているのです。だから、主人公は行く先々で窃盗や無銭飲食を繰り返すしかありません。それでも希望を捨てず、一人と一頭とで荒野をゆく彼らの姿がとても切ない。風呂にも入れずどんどんと汚れてゆく主人公と対照的に雄大な大自然の映像はますます美しさを増してゆく。この監督の無常観に満ちた、その詩的センスの良さには唸らされます。ただ、惜しいのはピートが途中で呆気なく物語から退場してしまうこと。たとえどんな最期を迎えるにしても、ピートにはこの少年の旅路を終わりまで見届けて欲しかった。とはいえ、この少年がどん底に堕ちるぎりぎりのところでほんの少しの希望へと辿り着くラストには思わず涙してしまいました。いつまでも余韻に浸っていたいと思わせる青春ドラマの良品と言っていいでしょう。