<ネタバレ>罪を犯し、長年刑務所に収監されていた孤独な男、ウィリアム。刑 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>罪を犯し、長年刑務所に収監されていた孤独な男、ウィリアム。刑期を勤めあげ、ようやく娑婆に戻ってきた彼は誰に会うこともなく、街のカジノへと足を運ぶ。時間だけはほぼ無限にあった刑務所の中でウィリアムはひたすらカードテクニックを磨き、出所後はギャンブラーとして生きていくことを決意していたのだ。人並外れた記憶力を駆使し、ブラックジャックやポーカーで着実に儲けを出してゆくウィリアム。そんな中、カークと名乗る謎の青年が彼に接触してくる。カークは、ウィリアムが刑務所に入ることになった過去の出来事――アブグレイブ捕虜収容所での虐待事件のことを話し始めるのだった。なんとカークの父も同じ刑務所での罪を責められ、以来家庭がむちゃくちゃになったという。「あんたや僕の父に罪を着せ、一人だけのうのうとのさばっているあの元上官に一緒に復讐しよう」。過去は捨てたつもりでいたウィリアムだったが、そんなカークの提案に心搔き乱されてゆく……。ノワール映画の名作『タクシー・ドライバー』の脚本を書いたポール・シュレイダー、彼が監督を務めたという本作はいかにも彼らしい重厚な作品でありました。多くは語らず、都会の夜の空気を濃厚に漂わせる映像とジャジーな音楽とで構築されたこのハードボイルドな世界観、自分はけっこう嫌いじゃない。カジノと言う華やかでありながら何処か闇を感じさせる世界で刹那的に生きる男たち……。いやー、渋い。主人公を演じたオスカー・アイザックのダンディな魅力も相俟って、なかなか見応えのある作品に仕上がっていたと思います。社会に恨みを抱き、ただ復讐のためだけに生きる青年を演じたタイ・シェリダンも負けず劣らず渋い。そんな男臭い世界の中で、主人公に思いをよせるパトロン的な役を演じたティファニー・ハディッシュの存在が良いアクセントとなっておりました。ただ問題は、肝心のギャンブラーとしてのし上がってゆく主人公の物語と復讐に命を燃やす青年の物語が有機的にうまく絡まっていないところ。特に最後、優勝を掛けたポーカーの試合を投げ打って、青年の復讐のために会場を去る主人公の感情がうまく受け取れませんでした。え、どうして今?んでウィレム・デフォー演じる元上官はなんであんな簡単に拷問を受け入れたの?ここらへんをもっと丁寧に描いてほしかった。ダークでスタイリッシュな世界観は好きだっただけに、なんとも勿体ない。