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<ネタバレ>彼の名は、ウォーレン・シュミット。長年勤めてきた大手保険会社で無事に定年を迎え、この度円満退職したばかりの平凡な男だ。長年連れ添った妻との仲も、いろいろと不満はあるがそれなりに良好。今は離れて暮らす一人娘のジーニーも結婚が決まり、現在式の準備に余念がない。たくさんの友人に囲まれ、平凡ながらも充実した人生を送ってきたと自分でも信じていた。だが、これから妻とともに穏やかな第二の人生を謳歌しようとしていた矢先、彼は急な悲劇に見舞われる。妻が病に倒れ、呆気なくこの世を去ってしまったのだ――。これまで家のことは何でも妻に任せきり、一人娘ともろくに腹を割って話したこともない、とにかく仕事第一だった彼の生活はその日を境に一変することに。瞬く間に家の中は荒れ放題、身なりも乱れ、酒や食事にもだらしなくなり、娘との関係も次第にギクシャク。唯一の慰めは、アフリカの慈善団体を通して文通している会ったこともない6歳の少年との交流だけ。にっちもさっちもいかなくなった彼は、とにかく娘の結婚式に参列するため、大きなキャンピングカーで一人旅に出ることを決意する。果たして彼は無事に生活を立て直すことが出来るのか?定年退職を迎えたある一人の男の人生の危機を、ほろ苦いユーモアを交えて描いたヒューマン・ドラマ。監督は、この手のしがない中年男のトホホな日常を描くことにかけては定評のあるアレクサンダー・ペイン。彼の代表作として有名な本作を今更ながら今回鑑賞してみました。いやー、相変わらず抜群の安定感でなかなか面白かったですね、これ。よく考えたらけっこう深刻なお話なのに、そこまで重たくならずに描くこの監督のバランス感覚は大したもの。でっかいキャンピングカーで全米各地を巡る彼の珍道中はなんともトホホ感満載で、見ていて思わず苦笑い。特にヒッピー崩れの夫婦の妻に酔っ払って思わずキスしちゃうシーン、女にブチ切れされて慌てて逃げ出すとこは笑っちゃいましたわ。そして、娘の結婚相手の未だ性欲旺盛な母親に裸で迫られるシーンには爆笑。誰得ヌードを大胆に披露してくれた?キャシー・ベイツには拍手喝采ですね。唯一不満だったのは、主人公を演じたジャック・ニコルソンが強面過ぎて若干役に合ってなかったとこくらい。そして最後、主人公が会ったこともないアフリカの子供の絵を見て泣いてしまうシーンは、自身の置かれた境遇を改めて認識した末の絶望の涙だと思うとなかなか深い。人生のやるせなさを暖かな目で見つめたペーソス溢れる佳品でありました。