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<ネタバレ>ブレッソンの映画は、映像が身体に染み入るように流れてくる。それはカットのリズムと劇的さの排除によるところが大きい。この「バルタザールどこへ行く」においてもその二つの要素がもちろん基底にはあるが徹底はされてない印象だ。素晴らしくリズミカルなシークエンスもあれば、もたついた鈍い足取りの場面もある。乾いた物音だけが響く心地よい静寂もあれば、べとつくように甘いシューベルトの音楽が流れもする。しかし驚くほどに高精細なモノクロ画面や、光量の高い画面作りなどブレッソン映画のなかでも特筆すべき点もある。高精細なのにどこか靄がかかったように幻想的な画面なのだ。特にヴィアゼムスキー演じるマリーの横顔を捉えた素晴らしく美しいショットには眼が釘付けになった。このショットはストローブ=ユイレの絵作りにも影響を与えたのではないか、とひそかに推測している。