<ネタバレ>前半は海兵隊養成所、後半は戦地のベトナムが舞台になるが、前半 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>前半は海兵隊養成所、後半は戦地のベトナムが舞台になるが、前半の出来栄えが見事。
微笑みデブの人格が破壊される過程がとてもリアル。
殺戮者を育てるための海兵隊での洗脳教育。
人間性を捨てなければ、立派な殺戮者にはなれない。
教官の下品で卑猥な罵倒にさらされ、イジメを誘発するような環境の中、穏やかだったデブの顔つきがすっかり変わってしまう。
連帯責任を強いる教官のせいで仲間からも嫌われ、どこにも逃げ場がなければ、銃と話をするようになっても仕方がない。
訓練の目的通りに完全なる殺戮者になりきっていれば結末は違っていただろうが、そこまで自分を捨て切れなかったことが哀れを誘う。
何が起こるかわからない緊迫感に、思わず見入ってしまった。
教官は憎まれ役だが、実は理不尽な人間ではなく職務に忠実なだけで、認めるべきところはちゃんと認めていた。
卒業してから実は優秀な教官だったと教え子たちの思い出話になったかもしれない。
でも、歯車が狂えばこういう惨事も起こりえる。
孔子が弟子の性格によって教え方を変えたように、人に応じた教え方があったはずで、一律の古い軍隊教育が生んだ悲劇。
もっとも、職務自体が人間性の破壊という狂気をはらんだものだから、個人の責任とはいえないけれど。
前半はパーフェクトだったが、後半のベトナム戦地編では明らかに失速。
どこかで見たことのあるような戦場風景で、前半のようなインパクトがなかったのが残念。
後半にも戦争の狂気がハッとする切り口で描かれていたら、不滅の大傑作になったかもしれない。
瀕死の重傷を負った女狙撃手にトドメを刺すくらいでは、狂気漂う前半と均衡がとれず、ドラマとして弱い。