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<ネタバレ>序盤の撮影中、前田敦子演じる葉子はいつも蛍光色のカラフルな服を着ています。世界の最果てのようなウズベキスタンの荒涼とした湖の風景に、その色がやたらと映えます。もちろん番組の衣装ですが、映画の意図としては、大人が子供に目立つ洋服を着せる感覚じゃないかな。迷い子にならないように。 湖面に浮かぶ舟や遊園地のアトラクションは、地に足がついていない少女心理の象徴。バザールを一人彷徨う危うさなんか、彼女が人生の路頭に迷う姿そのものでしょう。彼女は「少女」でした。 そんな彼女を高み (大人) へと導いた男たち。日本に待つ彼はもちろん、加瀬亮の上司もしかり。山羊 (オス) は、自由と厳しさが待つ "現実" の象徴でしょうか。面白いのは「愛の讃歌」の使い方で、それが誰のためになのか、本命の彼が確信犯的に登場しないあたり、あえて視聴者それぞれの心にある「顔」を大切にしたように思えます。 それにしても、この映画のなんという音楽の違和感だ。懐かしくてレトロな響きであり、どこか不安な旋律、、すごくいいんだけど、これがこのストーリーと全く合っていないんだ (笑) かつてホラー映画の名手であった黒沢清監督も近年は作風が変わりましたが、どうやらこの音楽 (BGM) だけは主義を貫きたいようだ。実はジャンルではなくて、この揺るぎない「音楽」こそが、黒沢清たる本当の個性かもしれない、、最近はそう思えてきた。