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<ネタバレ>これは、モノクロの終末的な映像のなか、無機質で閉鎖感が漂う街に住む、悲壮感漂う辛気臭い男が、意味不明な数字の謎に取り憑かれて、自らドリルで穴を開けて砕け散るという、とても救いのない物語です。雰囲気はまるで、リンチの「イレイザーヘッド」を彷彿させます。かなり影響受けてますよね。一見、とてもミステリアスなストーリーですが、要するには "中毒性あるもの" とその依存症 (中毒者) の恐怖を描いた物語と思います。この数学の謎を薬物やギャンブルの依存症に置き換えるとわかりやすいかな? だから本格的な数学の謎解きを期待しても肩透かしを食らうし、数学の描写もそこまでのリアリティはありません。(サスペンスの要素としての数学、なんです) そしてこの映画に夢や希望はいっさいありません。ただ、逆説的にそれを提示はしています。爺さんの台詞が全て意味深で、特にアルキメデスのエピソードが面白いです。彼は歴史の偉人に対して、その功績や閃きに触れることなく、「最も大切なのは妻の存在だ」と言いました。もちろんこれは、マックスに遠回しに提言しています。彼は隣人の女性の好意、つまり目の前にある幸せに目もくれず、答えのないもの (=叶わない夢) を追い求めて砕け散った。本作は極めて作家性が高くカルト映画のにおいが漂いますが、もっと身近な小さな幸せに目を向けよう、という等身大で普遍的なヒューマンドラマである、と断言します。