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<ネタバレ>話としてはSFの側面が強いはずですが雰囲気重視のせいか、どうも”暗い青春恋愛映画”の様相を呈してしまっています。そもそもプロローグでクローン技術の普及発達まできちんと言及されていないがため、ヘイルシャムのパートもあまり可哀そうに見えず、ルーシー先生の告白の衝撃も微妙、コテージで自分のオリジナルにまで話が及んでもあまり衝撃的に感じられないのは残念でした。
詩的な文学作品は大好きですが、雰囲気を重視しすぎたせいで「クローンにも人間の尊厳があるのか」というとてつもなく重大な問題がスルーされてしまっているように感じました。(そこを描きたかったんじゃないのか?って話ですよ) 他の方も書かれていますが主人公達が自分の運命を受け入れてしまっていること自体にも無理があり、「悲しい」を共有できないばかりか、厳しく書くなら「バカなの?死ぬの?」という状態にまで陥ってしまっています。ヘイルシャムの描写からクローンにも”心”があるのは一目瞭然ですが、そこもサラッとスルーされており、あくまで彼らはクローン羊と同じ、物と同じなんだという扱いになっている点にも激しく違和感を感じました。(実際問題、あれだけ素直で素晴らしい若者達と接している看護士の描写もあるが、なんとも思わずにサクッとメスを入れられるものかね?)
映像の美しさは当然ですが「提供」「三回目」「終了」などの言葉の雰囲気も非常に素晴らしく、彼らの絶望感や未来がやってこない感じがよく表現されています。好きなジャンルなので期待していただけに残念な作品でした。余韻があるので点数は少しオマケで。