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<ネタバレ>ノーラン監督がバットマンで一世を風靡する直前の作品。業界では既に有名監督でしたので、本作ではアル・パチーノとロビン・ウィリアムズの超一流役者がまとめてスクリーンに大写しになるという、非常に贅沢な一コマが堪能できます。しかし作品自体は割と凡唐で、田舎で起きた殺人事件をLAの花形ヒーロー刑事が追うというシンプルなもの。白夜=夜が無いという特殊な仕組みはあるものの、一部主要人物たちが寝不足に陥るだけでその他目立ったカラクリはありません。まあこれは他レビュアーさんの書き込みにも見られるように、実際に白夜を経験していない人にはピンとこないのかもしれません。
物語自体もシンプルで、内部監査でヒーロー刑事の過去の汚点に火が付いて僻地捜査に飛ばされたものの、慣れない捜査で誤射がおきるというシンプルな構造です。ただこのプロットにはきちんとリアル志向の骨格があり、この悪徳刑事は自己の利益のみでは動いておらず、世の為を思って証拠を捏造したり、自分のミスが発覚すると過去の判例までも反故にされる可能性を恐れて秘匿してみたりと、一応は正義の側面もあります。実際、新人研修の手本となるようなヒーロー刑事としてのエピソードもきちんと描かれています。
凝った脚本に難しいセリフが合わさってイマイチ判り難い部分もありますが、アル・パチーノがモーラ・ティアニー扮する宿屋の女性(ERのアビーさん)に自身の心境を吐露するシーンや、犬の死体を利用して証拠を捏造するシーンなど興味深い演出も結構多いです。できれば被害者タニヤ(キャサリン・イザベル)と犯人が親しくなった経緯や彼らのバックボーンまで掘り下げてくれていたほうがより深みがあったと思いますが、時間が足らなかったのかそれらは一切描かれていませんでした。
結局のところ、ヒーロー刑事といえど彼もただの人であるという側面が見え隠れしていて興味深いのと、彼の最期はアレしかないという納得の流れで、きちんと若手を正義の道に導く彼の最期は何とか許容できました。あと皆さんがご指摘のようにロビン・ウィリアムズが、、まあ考えようによってはある種かなり不気味ではあるものの、恐怖心をあおる描写がほとんどなくてまるでイイ人にしかみえないのが残念でした。その割にラストでのあの暴れっぷりには少々違和感を感じました。「セブン」ほどの悪の描写は必要ないにしても、、せめて「サイコ」くらいのネジが飛んだ演出は欲しかったところです。
映画としての出来はかなり良いものの、極めて地味な作品でした。何年か経ったら忘れてしまうでしょうし、そうかといってまた見返したいかと聞かれると微妙な映画です。ノーランと大物演者らに免じてかなり甘めの点数。