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<ネタバレ>コーエン兄弟の人間の描き方というか、映し方?が好きだ。何かをやっても上手く行かず、環境に振り回される人間は様々な映画に登場するが、この兄弟の映画に出てくる人たちはちょっと違う。愛らしいのだ。
ルーウィンは決してダメな男ではない。お世話になっている夫婦の猫ちゃんが脱走すれば走って捕まえに行くし、自身が妊娠させてしまった相手の中絶費を払うためにフリーランスとして仕事を引き受けた。ちゃんと責任を取ろうとする男ではあるのだ。彼なりのプロ意識や、ミュージシャンとしてのポリシーも持っている。そして、常に夢を見ているわけではなくて、まともな生活を送るためにかつてのように船に乗り海に出ようともしている。
夢は叶わない。嫌なヤツとばかり出会う。思い通りにいかない人生を送るルーウィンをコーエン兄弟はいつものようにコミカルに描くが、主人公のその姿は実に人間らしいと感じた。元・相棒の影に苦しむルーウィンはとても自然で、ちょっと美しくも見えた。
残念ながら、彼はこの映画の最後まで成功を手にすることはない。しかし、その姿に哀しさはあまりない。本作はオープニングの場面にループしてエンディングを迎えるのだが、これからもルーウィンはこんな感じであり続けるんだろうなぁと示唆させられた。ポケットに100ドルくらいだけ入っていて、どこかで知り合った人の部屋で寝泊まりし、歌う場所をさまよって、くたびれた顔で“存在”し続けるのだなぁ、と。